大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和24年(ワ)2171号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

原告は財団法人樟蔭東高等女学校の理事並理事長であり、右法人の経営する樟蔭東高等学校の校長であつたところ、理事の一人である被告森は学校の経営を聾断せんとして、原告に背任橫領の事実ありとし、告訴すべき旨を以て原告に辞職を強要した。原告はそのような犯罪の事実はないが、告訴をされることは教育者として致命的な打撃であると考え、森の怒を解く方便として辞職の意思表示をするに至つた。しかし右意思表示は嘘僞のものであり、森もその事実を知つているから無数の意思表示と言うべく、仮に有効としても森の強迫によるものであるとして取消の意思表示をした。従つて原告は依然として理事長、理事並に校長の地位にある。然るに被告等は右の無効又は取消された原告の意思表示を利用し、理事会及び評議員会の決議を以て原告の辞任を承認し、後任者を選任し、自ら理事と僣称し且つ登記を経由して原告の地位を争うので、地位の確定及び登記の抹消を求める。以上が原告の主張の要旨である。

(判斷)

訴却下。

判決は理事長及び理事たるの地位の確定の請求につき次の通り述べている。

「その請求の原因たる事実は、右訴外財団法人の理事長及び理事である原告が右財団法人の組織内において退任したものとして取り扱われるに至つたというにあるのである。結論から先きに言うならば、当裁判所は、かような紛争に基ずく地位の確定の訴訟においては原告はよろしく財団法人そのものを被告とすべきであつて、原告の主張に反して、法人組織内において現に理事長若しくは理事とされているものであるとは言え、本訴の被告等のような個人を被告とすべきではないものと考へるものである。この説明に対しては、原告は、自らこそその財団法人の理事長なのであるからその場合誰を代表者として訴を起すのか、と反問するかも知れないが、それはともあれ法人の組織内において現に理事長として扱われている者(本件について言うならば被告森平蔵)を代表者とすればよいのである。(中略)現に法人の組織内において代表者として扱われているものであるとは言えそのもの個人を被告として訴を起すにおいては、その訴訟における判決によつては法人自体にはその判決の既判力は及ばないのであるから、法人の組織内の爭としては、何ものをも加えないのは明かであろう。従つて、法人の組織内の争である本訴における右の請求については、本訴は被告とすべきものを誤つたものであつて、本訴の被告等は被告たるの適格を欠くものといわざるを得ない…」

次に登記義務者は法人自体であるから、此の点についても本訴は被告とすべき者を誤つているとし、最後に校長たるの地位の確定の請求につき次の通り述べて訴を却下した。

「校長たる地位自体は当該学校の設置者との間の法律関係であつて、何人でもあれそれ以外の他の第三者との間の法律関係ではないのである。勿論かような法律関係についても第三者がこれを争い、それの確定について利害関係がある限り、その第三者との間において訴訟により確定を求めることは当然であるけれども、(中略)被告等が学校設置者たる法人の理事と称するということだけでは右の点の利害関係ありとは考えられず、他に正当な利害関係のあることを主張しないのであるから、この点の請求もまた確定の利益を欠くものといわなければならない。」

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!